空き家特例

相続

以下の文章では空き家特例の概略、対象となる不動産、特例が適用される要件、令和5年度税制改正の内容、他の特例や控除との適用関係についてお伝えします。

概略

空き家特例の中身についてお伝えする前に、不動産を売却する際の税金の仕組みから解説をします。

例えば、4,000万円で買ったマイホームを売却する時に7,000万円で売れたとします。この時に、4,000万円で買ったのに、7,000万円で売れるので、3,000万円の利益が出ます。この利益に対して、税金がかかります。

税金は、所有期間が5年以内なら、所得税15%、住民税5%、合計20%、マイホームの所有期間が5年超なら、所得税30%、住民税9%、合計39%。ただし、平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%がかかります。

先ほどの4,000万円で買って、7,000万円で売れたケースでは、3,000万円の儲けが出た訳なので、3,000万円×20%、つまり、600万円の税金がかかります。これだとかわいそうなので、相続が起こる前の生前にマイホームを売った時には、税金を軽減しますという制度があります。それが、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」、通称「3000万円控除」と言われるものです。マイホームを売却した場合には、3,000万円の譲渡所得まで控除する事ができます。なので、今回のケースでは、3,000万円の譲渡所得なので、全額控除され、税金がかからなくなるという制度です。

ここでは、制度を理解してもらう為に簡便的に話しましたが、次のようなケースで、譲渡所得がよく発生します。例えば、4,000万円で買った不動産の土地と建物の内訳が、土地が2,000万円、建物が2,000万円だったとしましょう。税金を計算する上で、土地2,000万円に関しては、価値が変わりません。しかし、建物2,000万円は、経年劣化により価値が減っていくと考えるのです。この価値を減らしていく行為が減価償却と言われるものです。このように、建物が減価償却をする事で、譲渡所得が発生して税金が発生するケースがあります。

他にも、高齢の方が築年数の古い不動産を売却する時などによくあるのが、購入した時の価格が分からなくなってしまう場合です。不動産を購入した時の売買契約書などが残っておらず、不動産を購入した時の価格が分からないと、売却金額の5%しか経費として計上できません。

これらの理由などで課税所得が高くなってしまう人でも、生前は、3000万円控除が使えますが、相続後の相続人は使えないので、高い税金を支払っていました。

このような背景がある中、国は、別の問題についても頭を抱えていました。それは、空き家問題です。売却用、賃貸用、別荘などの二次的住宅以外の空き家の数が年々増えているのです。1998年182万戸から、2018年には347万戸と、約2倍に増えており、今後も急速に増えていくと予想されます。空き家になると、不法投棄、放火の危険性、不審者や犯罪の危険、動物の棲みつき、草木が生い茂ったり、害虫が発生するなど、人が住まない事で様々な事が発生します。なので、空き家を減らす事は、国を挙げて必要な施策です。

なので、空き家の発生を抑制しようという国の思惑で、不動産を売却する際の税金を安くする制度を作ったのが、『被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』、通称空き家特例です。

・対象となる不動産

まずは、家屋。特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件すべてに当てはまるものをいいます。空き家特例は令和9年12月31日まで適用可能になりました。

イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと。(マンション・二世帯住宅除く)
ハ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
  *老人ホームや障碍者施設にはいっていた場合は除きます。賃貸していたり同居していた人がいる時は対象外になります。

次に、土地。特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」とは、相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利をいいます。なお、相続の開始の直前において、その土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。

(例)母屋が350㎡ 離れが150㎡ 土地が800㎡の場合
800㎡×350㎡/500㎡=560㎡
560㎡のみが被相続人居住用家屋の敷地として控除の対象。マイホーム特例は倉庫や車庫も特例の対象になります。違いに注意してください。

・特例が適用される要件 特例が適用される要件は、7つあり、全てに当てはまる必要があります。

1.売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。
2.次のイまたはロの売却をしたこと。
 イ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。 (注)被相続人居住用家屋は次の2つの要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(イ)の要件に当てはまることが必要です。
 (イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
 (ロ) 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。
ロ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。 (注)被相続人居住用家屋は次の(イ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(ロ)および(ハ)の要件に当てはまることが必要です。
 (イ) 相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
 (ロ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
 (ハ) 取壊し等の時から譲渡の時まで建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
3.相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。 4.売却代金が1億円以下であること。(分割販売した場合は3と同様、相続開始から3年を経過する12月31日までが合算対象)
5.売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
*併用可能な特例→マイホーム特例、小規模宅地特例、住宅ローン。併用不可の特例→居住用財産の軽減率の特例等
6.同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
7.親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。

・令和5年度税制改正

空き家特例は、期間限定の特例です。従前は、平成28年4月1日から令和5年12月31日まででした。ですが、令和5年税制改正大綱で、令和9年12月31日に延長される事が発表されました。また、期限以外にも改正点があるので確認をしていきます。改正では、緩和された部分と縮小された部分があります。

まずは、緩和された部分からみていきます。これまでお伝えした現行制度では、譲渡時までに①耐震基準を満たすか、②取壊すことが条件とされています。ですが、令和6年1月1日以後の譲渡については、譲渡日の属する年の翌年2月15日までに上記を満たせば適用できるようになります。相続人は建物と敷地を一緒に売却し、購入をした不動産業者などが建物を取り壊す場合でも、空き家特例が適用できることになります。

次に、縮小される部分です。現行では空き家を相続した共有相続人が何名いても一人3,000万円の控除枠が使えました。令和6年1月1日以後の譲渡については共有相続人が3人以上の場合、特別控除額が2,000万円に減額されます。つまり、譲渡益が9,000万円だった場合、2,000万円×3なので、6,000万円の控除が使え、9,000万円の譲渡益-6,000万円の控除額で、残りの3,000万円の譲渡益に対しては、600万円の税金を払う必要があります。

・他の特例や控除との適用関係

相続財産譲渡時の取得費加算特例は先ほどお伝えしたように空き家特例とは、選択適用です。

自己居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除は、併用が可能ですが、同一年内に併用する場合、2つの特例合わせて3,000万円が控除限度額となります。

自己居住用財産の買換え等に係る特例措置は、併用する事が出来ます。

譲渡所得の計算

譲渡所得=売却金額ー(取得費+譲渡費用)ーそれぞれの特例控除額

取得費は家を購入した時の価格。不明の場合は売却金額×5%で計上
譲渡費用: 売却時にかかった費用(売却手数料、印紙税など)。
この計算により、純粋な利益部分に対して課税されます。

まとめ

譲渡所得が発生した場合は原則として利益が出ていてもいなくて確定申告が必要です。書類を準備して申告しましょう。