第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
生前贈与とは、生きている間に財産を配偶者や子、孫などに贈与することです。相続税の課税対象となる財産を減らせるため、相続税を軽減できます。いろいろな制度がありますが主として令和6年1月1日より改正実施された暦年贈与と相続時精算課税制度について述べていきます。
暦年贈与
贈与税は1年間で110万まで非課税です。税務署には申告不要。110万を超えたら申告が必要です。申告時期は贈与があった年から翌年の2月1日~3月15日までに申告しなければなりません。
申告するのはもらった人で、申告者が税金を払わなければなりません。
過少申告した場合→本来の税金+加算税
納める時期が遅れた場合→遅れた税額に対して延滞税がかかります。
*加算税、延滞税の詳細は国税庁のHPの贈与の欄を参照してください
贈与税には2種類あります。以下は国税庁のHPより引用しました。
<一般贈与財産用>(一般税率)
この速算表は、「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用します。
例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。
基礎控除後の課税価格 200万円
以下300万円
以下400万円
以下600万円
以下1,000万円
以下1,500万円
以下3,000万円
以下3,000万円
超税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55% 控除額 ‐ 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円 <特例贈与財産用>(特例税率)
この速算表は、贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年の1月1日において18歳(注)以上の者に限ります。)が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に使用します。
(注) 「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。
例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します(夫の父からの贈与等には使用できません。)。
基礎控除後の課税価格 200万円
以下400万円
以下600万円
以下1,000万円
以下1,500万円
以下3,000万円
以下4,500万円
以下4,500万円
超税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55% 控除額 ‐ 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円
一般税率、特例税率共に計算する時は基礎控除110万を差し引いて計算します。
計算例 祖父 65歳から子供の娘さん27歳に500万を贈与した→特別贈与財産・特例税率で計算
500万ー110万=390万 390万×15%-10万=48.5万→納める贈与税
夫婦の間で500万を贈与した。夫も妻も55歳→一般贈与財産・一般税率で計算
500万ー110万=390万 390万×20%ー25万=53万
*特定贈与財産の方が贈与税が優遇されている傾向があります。
ルール改正 3年以内持ち戻しから7年以内持ち戻しへ
令和6年(2024年)1月1日より被相続人が亡くなっ日から7年以内に贈与があった金額は相続財産に加算されると変更になりました。延長された4年間は段階的に実施されていく方針です。法改正以前の贈与は3年以内の持ち戻しが実施されます。
改正後は延長された4年間は総額100万までしか加算されません。正確に言いますと2027年1月1日までは3年以内の持ち戻しルールが適用されます。それ以降は段階的に7年ルールが適用され、残りの年数には総額100万まで贈与が認められます。7年以内戻しが完全に実施されるのは2031年以降です。申告不要だった110万円以下の金額も3年以内も7年以内も全て相続財産に加算されてしまいます。
*財務省の下記資料を参照してください。相続時精算課税制度についても記載されています。併せてご覧ください。5、6ページの2資産課税の章に出ています。
「令和5年度税制改正」(令和5年3月発行)
相続時精算課税制度
同じく令和6年(2024年)1月1日から暦年贈与と共に変更になりました。変更点は
1.基礎控除110万が認められた
2.被相続人が亡くなっても贈与を持ち戻しが不要(110万の基礎控除贈与額の総財産に加算不要)
3.土地・建物が災害で一定以上の被害を受けた場合は相続時に再計算。贈与時の価額から災害により被害を受けた部分に相当する額を控除した残りの額。
デメリット
1.土地を相続時精算課税制度で贈与された場合は小規模宅地特例を使えない。
2. 債務控除は出来ない(但し条件有。国税庁の条件参照してください)
暦年贈与と相続時精算課税制度の比較
項目
贈与者
相続時精算課税制度
60歳以上の父母
暦年贈与
一般制限なし・特例父母・祖父母
受贈者
18歳以上の子・孫
一般・制限なし 特例は制限有(直系尊属、18歳以上)
基礎控除
110万 2500万までが限度
110万(左記の金額以下が非課税)
税率
2500万超の場合は一律20%
2種類有。一般・特例税率
相続時
相続財産に加算。毎年110万以下の贈与は加算不要。
段階的に7年以内の持ち戻しルールに改正。上記参照
持ち戻し価格
原則として贈与時の価格。例外的に土地・建物に一定以上の災害等にあった場合は相続時に再計算
贈与時の価格
メリット
・2500万まで非課税で贈与可能。110万以下の贈与なら申告不要。相続時に加算不要。値上がりしそうな土地等を贈ると節税効果有。争族争いにはなりにくい。相続時に総財産に加算するため
申告不要。贈与者は複数の人に贈与できる。早いうちから相続税対策ができる。孫への贈与は相続税加算不要。
デメリット
同一人物から暦年贈与は出来ない。孫への贈与は相続税2割加算
持ち戻し期間が延長。相続財産に加算され安くなった。争族争いになりやすい。特別受益に該当するので
贈与税と相続税と比較
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税と贈与税がどちらがお得
結論から言えば難しい、何とも言えない。個別ケースで考えていかなければなりません。
表だけみていると1000万のケースは相続税は100万。贈与税は一般税率は231万。特例税率は177万となっております。手残り残は相続税で900万。一般贈与で769万。特例贈与で823万です。
一見相続税の方が安いと思われますが、相続税は基礎控除3000万+法定相続人数×600万があります。
財産の時価が基礎控除内だったら税金も相続税対策及び税務調査も不要です。上記の表は基礎控除を超えた場合の計算式です。(財産の大まかな時価の出し方は別項目で述べます)
一方で基礎控除を超える場合には相続税を10ヶ月以内に原則として現金一括支払しなければなりません。葬式費用、施設に入っていた入院代を払ったら、納税資金が足りない場合は土地を売買しなければならないケースも出てくるでしょし、又は銀行等からお金を工面しなければならないこともあるでしょう。
相続税は相続時に発生します。確定測量のための費用、土地を売却するためにレインズに登録、売買金額によって工務店に払う手数料が発生してくるでしょう。他には税理士、司法書士に対する手数料も発生します。
そう考えると全体的な費用を考える贈与税より相続税を払う時のほうが大きな金額を払うケースもでてくるケースもあります。
贈与税は基礎控除が110万なので相続税と比較して圧倒的に少ない金額になっております。これは生前贈与はやっても無駄な事なので相続財産として残しておきなさいという意味でしょう。それでも行う意義はあると思います。相続税対策として効果はあると考えています。
暦年贈与で110万を10年続ければ合計1100万贈与税0で相続税より安いと考える人もいるでしょう。これは余程早い時期に60代前半から始めないといけないでしょう。普通の人だったら退職金をもらったばかりで相続税対策ではなく、老後の資金対策として残しておくでしょう。一方で孫にだったらいくらか贈与してくれるかもしれませんが。
相続時精算課税制度はどうでしょうか?贈与の1つですが、2500万を限度として総財産に戻さなければなりません。私の個人的な意見ですが、被相続人が年齢若いうちに(何歳とはっきり言えませんが)認知証対策として土地等を贈与してもらい、不動産投資などを行う。110万は申告不要ですから毎年申告してもらう。認知証になったら停止してしまう。110万の戻しは不要。
*どちらがお得なのかはっきりと言えませんが、個別のケースで検討していくしかないでしょう
贈与税の時効
贈与税を申告が必要なのに無申告していた。これを忘れていた。
原則として申告期限を基準(贈与した翌年の3月15日まで)としてから6年
悪質な(故意でやった)場合は7年で時効が成立します。